コラム 「堕落には底がない?」

霧多布にて

「わたし、今年も北海道ついてっていいかしら?」と、昨年(2002)のツーリングで味をしめたF嬢は言った。

「あ、いくのね、やっぱりいくの、そうだよね。ところで普段乗ってるのバイク?」と尋ねると、彼女はにやけながら首を横に振った。

「てことは、もちろんバイクはまた陸送で?」
「とーぜん」
「ふうむ」
「どうせ一週間しかない夏休みなんだから、その方がよくなくて?」
「・・・・」

といった案配で、2003年の北海道ツーリングにもF嬢は同行することとなった。

 

雲の上から

 

そこで昨年同様、オートバイを北海道まで陸送し、本人達は飛行機で北海道まで向かうというプランとなるのだが、昨年利用したTORIKバイクパレットだと、出発前に東京都内のデポまでバイクを届け、帰宅後にまたデポまでバイクを引き上げに行かなければならない。これが面倒くさかった。

「他に良い手段ないかなあ・・・」とWEB検索をしていて見つけたのが、高栄運輸さんのBHS。これなら、自宅引き上げ・引き渡しで、デポまで赴く必要がない。

2003年は5台でのツーリング(突然1名のドタキャンが入ったが、とりあえず5台バイクは送り、1台は北海道を全く走らないまま帰ってきた)、5台分の予約書をFAXで流すと、ドライバーから自宅の所在を確認する電話がかかってきた。

「ええと・・、国道254を・・・」と言いかけた僕の言葉を遮って、「あの、へんなバイクとどけた○○さんですよね」と言う。

「へんなバイク・・・、ああ、あの時のドライバーさん!」

その数ヶ月前、僕はオーストラリアの知人からMVの旧車を分けてもらった。そのオートバイは大阪港で水揚げされ、輸入代行業者が国内での陸送を依頼したのが、高栄運輸さんだった。自分で直接手配したわけではないので、「高栄運輸」という社名は知らなかった。

なんだか人なつっこい、気のいいアンちゃんがオートバイを届けてくれ、彼の大阪弁に引きずられながら、長話をしたのを覚えていた。

「んじゃ、いついつの何時頃お伺いします。近くまで行って一度電話しますんで」てな具合であっさり話がまとまった。

左に書いたように、BHSは楽チンである。羽田や千歳の人混みさえ我慢できれば、それによって得られる時間的メリットは大きい。

そして、甘い湯につかるたび、人は堕落してゆく。この年は、前年宿泊施設に苦しんだ記憶から、毎日のルートを決め、快適な宿を予約しておいた。おまけにツーリング最終日の雨が予報された途端、とっととバイクを堀さんところに返して、あとはレンタカーで観光。

バイクを降りてレンタカーに乗り込むなり、異口同音に発した言葉・・・。
「楽だね!」
「いやほんと、楽ちん楽ちん!」
「楽楽!」
「苫小牧まで海鮮炉端焼でも食いに行こうぜ」
「あたしノーザンホースパークいきたい」
「いいね、いいね、馬乗って炉端、それでいこ!」

堕落には底がない・・・・・。

 

ノーザンホースパーク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイクヒッチハイクサービス(BHS)を使ってみた

 

BHS

トーリクバイクパレットの難点は、自分でトーリクのデポ(関東圏の場合足立区入谷)まで、自分で車両を持ち込まねばならないことだった。ところが高栄運輸さんの”北海道ツーリングパック”は、自宅までバイクを引き上げに来てくれて、帰りも自宅までバイクを届けてくれるという、優れもの。料金は下表の通りで、全国各地から送りだせる。運賃はトーリクさんと比較してもリーズナブルだし、ツーリング中の転倒・事故に際しての車両引き上げサポート(別料金)も付随している。バイクが戻って来るときには、おみやげ(サッポロビール北海道限定版6缶)までついてくる。高栄運輸さんはパレットは使わず、トラックに直に積載するが、固定もしっかりしていて、バイクが傷つくなんていう心配はない(引渡・受取時にキズの確認作業あり)。詳細は高栄運輸のWEBを参照(2010年から「BHS北海道ツーリングパック」は「EZO RIDERツーリングパック」と名称変更され、千歳以外での受け渡しも可能となった模様)。

 

  往復 片道
東北 39,800 27,800
関東 49,800 34,800
北陸 54,800 38,300
中部 54,800 38,300
近畿 59,800 41,800
中国 64,800 45,300
四国 69,800 48,800
九州 69,800 48,800

 

高栄運輸への問い合わせは、WEBからも電話からも可能。僕等は2003年、2005年、2006年とBHSを利用させていただいたが、どれもお盆休みのピークに重なってのツーリングだった。BHSは通常、出発2週間前にオートバイ引き上げに来てくれて、帰路についても千歳での引き渡し後2週間を目安に自宅まで配送してくれることになっている。配送便の都合上、若干の日程の前後はあるが、僕等の経験から言えば、往路・復路ともに"最長で"約2週間程度のタイムラグと考えておいて差し支えない。

予約時期に関しては、8月中旬のツーリングなら、7月初旬くらいまでには予約するのが妥当だろう。僕等も通常そうしていた。例外は2005年のツーリングで、この年は新潟ー苫小牧間のフェリーの予約が3人分往復で取ってあった。ところが出発2週間前になって、もう一人の友人が急遽参加することになった。折しもお盆ラッシュの最中、人間一人のフェリーの追加予約は取れたが、オートバイは予約できない(当日キャンセル待ちすれば一台くらい乗せてくれるだろうが、乗れないという万一のリスクも避けたかった)。そこで急遽、無理を承知で高栄さんに電話したところ、何とか日程を調節して、期日までにオートバイを千歳へ届けてくれた。この時は本当に有り難かった(川端さん感謝してます)。

高栄運輸のドライバーさんは、皆フレンドリーでオートバイの取り扱いも非常に丁寧である。本社で電話に応対してくれる女性も地区担当者も、とても感じのよい方たちばかりである。

オートバイを受け取る千歳の"堀自転車商会"の所在は下の地図の通りで、JR千歳駅のすぐ目の前である。新千歳空港から千歳駅までは快速エアポートで約5分、荷物が多いようならタクシーを利用しても料金はたかがしれている。

先に高栄運輸のスタッフの方々の対応のすばらしさについて述べたが、この堀自転車商会のご主人・奥さんの人柄の優和さたるや絶筆ものである。堀自転車商会さんは地域柄、自転車・オートバイの他、農機具なども取り扱っている。ここには、古き良き時代の自転車屋さん・オートバイ屋さんの姿が残っている。この堀自転車商会さんに立ち寄るといつも自分はホッとするのである。

間抜けな話を暴露すると、初めてBHSを利用した年、僕はうっかりとツーリング中に車検切れになるのを忘れて、バイクの配送をかけてしまった。高栄さんにオートバイを預けて数日してからそれに気づき、受取場所である堀さんのところへ電話して相談すると、堀さんは僕等の北海道到着に間に合うように車検を更新してくださるという。あわてて車検証やら納税証明書を堀さん宛に郵送し、車検を取っていただいて、難なきを得た。この時のことも感謝にたえない。

一昨年の夏のツーリングでも、フライト当日に首都圏をひどい雷が襲い、飛行機の離発着が著しく遅延した。このため千歳到着が午後7時過ぎになってしまった。もちろん車両の受取・引渡時間を外れている。あらかじめ遅延の連絡しようにも、ボーディング後の機内足止めなので携帯電話さえ使えない。千歳空港にランディングしてからようやく堀さんに電話して事情を説明すると、「時間を気にせず取りに来てくれて良い」という有難いお言葉。しかし、こうした心遣いにはやはり心遣いでこたえなければならない。事情はともあれ、夜間にずうずうしくバイクを引き取りに参上して、善人に不要な迷惑をかけるのは恥知らずである。どうせその日は札幌に宿泊の予定だし、バイクは翌日まで預かっていただくことにして、翌日午前、正規の受け取り時間帯にお伺いすることにした。現代にあっては色あせつつある人と人の思いやり深い触れ合いを大切にしたい。

それから、万一北海道ツーリング中に事故やトラブルが生じた際にも、BHSには車両のピックアップサービスが付随している(もちろん別料金である)。知らない土地、特に広大な北海道で車両トラブルに見舞われると、本当に途方にくれる思いがする。10年ほど前のツーリングの際、阿寒横断道路で仲間のバイクが転倒、修理不能となった。この際は前夜宿泊した弟子屈の旅館の御主人の軽トラックを借りて車両を旅館まで戻し、それから町内のバイク屋に引き上げてもらい、修完了後理後陸送をかけてもらう次第となった。トラブルの種類やそれが生じた場所場所によって、それぞれに最善と思われる対応策があり、それを選択すべきではある。しかし、いざ手の尽きた時に、確実にバイクを引き上げてくれるバックアップがあるというのは心強い。

料金設定にしても、たとえば関東からの往復49,800円というのは破格である。ツーリング時期によっては格安航空券を使うという手もあるし、限られた休暇を有効利用できるとあれば、フェリー利用よりもリーズナブルとも考えられる。

 

 

堀自転車商会(千歳)

新千歳空港と堀自転車商会

 

堀自転車商会(千歳)

堀自転車商会